サンマイのオフダ。




幼い頃に聞いた怪談には
なぜこんなにもインパクトがあるのでしょう。
子供心にがっちり食い込み、
今なお恐怖の対象となる
怖い系の昔話。

例えばこんな話がありました・・・。











和尚「これ、珍念。珍念や」


珍念「なんすか、和尚様」


和尚「ちょっと町までお使いに行ってくれんかね」


珍念「まじっすか、和尚様」


和尚「不満かな?」


珍念「だって町へ行く峠には馬場が出るらしいじゃないッスか」


和尚「うん、婆だね。馬場も怖いけど、出るのは鬼婆だね」


珍念「じゃあなおさら嫌ですよ」


和尚「そこを何とか頼むよ珍念」


珍念「えー」


和尚「この通り」


珍念「チッ。わかりましたよ」


和尚「おお、そうかすまないね」


珍念「あんまりアレだと児童虐待で出るとこ出ますよ」


和尚「じゃあもしもの時のために、この三枚のお札を持って行きなさい」


珍念「マジ?3万?」


和尚「いや『おさつ』じゃなくて『おふだ』。字は同じだけどね」


珍念「なんだよ、お札かよ」


和尚「珍念。目に見えて態度が悪くなってますよ」


珍念「おっとこりゃ失敬」


和尚「いい加減にキャラを定めなさい」





こうしてお寺の小坊主は元気いっぱい出かけていきました。
そして、丘に差しかかった頃。




珍念「♪丘をこ〜え〜ゆこ〜ぅよ〜っ」


婆様「あ痛たたたたた」


珍念「口笛ふきつ〜つ〜♪」


婆様「陽気に無視しない」


珍念「あれ?どうしたんですか、鬼婆?」


婆様「いや、それはまだわかんないから」


珍念「どうしたんですか、おばあさん?」


婆様「ちょっと腰を痛めてしまってねぇ。あ痛たたた・・・」


珍念「救急車呼びます?」


婆様「いや、たぶん時代的にないと思う」


珍念「じゃあ僕にどうしろと!?」


婆様「なんでちょっとキレてるの」


珍念「はいはい、家まで送ればいいんでしょ。送りますよ。はいはい」


婆様「すまないね〜」





こうして優しい珍念はおばあさんを家まで送ってやりました。
御礼に、とご飯をごちそうになり、すっかり満腹の珍念。





珍念「おばあさん、僕、眠くなっちゃった」


婆様「うんうん眠っていきなさい、泊まっていってもいいんだから」


珍念「うん、じゃあちょっとだけ・・・」


婆様「おやすみ小坊主さん・・・・・永遠にな!」


珍念「なんか言いました?」


婆様「いやいや、こっちの話じゃよ」


珍念「そう、じゃあちょっと眠りますね」


婆様「うんうん、おやすみ小坊主さん・・・・・永遠にな!」


珍念「もうそういうのいいから」


婆様「ごめんよ、小坊主さん。もう眠っておくれ・・・・・永遠にな!」


珍念「・・・」





しつこい芸風のばあさんをいなして、眠りにつく珍念。
すっかり眠りこけてしまい、時刻は夜中に。



シャーッ、シャーッ


何やらおかしな音に珍念が目を覚ますと、
おばあさんが枕元で包丁を研いでいるではありませんか!
見ると、優しそうだったおばあさんの顔は一変、
口は耳元まで裂け、恐ろしい形相です。




珍念「ねえ鬼婆」


鬼婆「いや、物事にはステップってものがあるじゃろうに」


珍念「はい」


鬼婆「まずは驚くのが礼儀でしょうが」


珍念「すみません、もう一回、目を覚ますとこからいいですか?」


鬼婆「やってみ」





シャーッ、シャーッ


珍念「うわぁ」


鬼婆「いや、なんか引いてるみたいなリアクションだから、それ」


珍念「じゃあどうしろって言うんですか?」


鬼婆「またキレるし」


珍念「ああ、もう。とりあえずトイレ行っていいですか?」


鬼婆「いかんいかん、逃げる気じゃろう」


珍念「あ〜もう漏れそう!ってか漏れた、やっちゃった」


鬼婆「わかった、わかった。ちょっと待ってろ」





そういうと鬼婆は珍念の腰に縄を巻き
その端をつかんでトイレまで連れて行きました。

珍念はトイレに入るとすぐに腰の縄を柱に結び
そこに和尚様にもらったお札を貼りました。
そして、窓から外に飛び出し、一目散に逃げ出したのです。



チョロロロロ・・・

鬼婆「まだかえ、坊主?」


お札「まーだまーだだよ〜」


柱に貼ったお札が珍念の声色で応えます。


チョロロロロ・・・

鬼婆「まだかえ、坊主?」


お札「まーだまーだだよ〜」


チョロロロロ・・・

鬼婆「まだかえ、坊主?長すぎじゃ!」


お札「排尿障害は成人病の一種だよ〜」


こうしてお札の機転にも助けられすっかり距離をかせぐ珍念。



チョロロロロ・・・

鬼婆「ええい!遅い!」


と鬼婆が縄を強く引くと柱がベキッとへし折れました。


鬼婆「おのれ小僧、だましたな」


お札「残尿感にはカボチャが効くよ〜」


使命を全うし、なお小ネタを披露する1枚目のお札。
鬼婆は家を飛び出すと、急いで坊主を追い始めました。




鬼婆「ま〜て〜」


珍念「うわ、やべ。マジ速え」



自慢の駿足を活かし見る間に距離を縮める婆。
みるみる近づき、今にもその手が珍念に届きそうな時!
珍念は2枚目のお札を投げて叫びました。



珍念「大きな川よ出ろ〜」


はいどーん。


鬼婆「いや、そこは『ザバ〜ン』とかのがよくない?」


冷静にツッコミながらも見る間に川の水を飲み干す鬼婆。
驚異のポテンシャルを見せつけられた珍念は
大あわてで最後のお札を投げます。



珍念「火の壁よ出ろ〜」


はいどーん。

メラメラと燃えさかる炎が鬼婆の行く手を塞ぎます。
すると婆はさっき飲み込んだ水を
「おぇ〜」っと吐き出し火を消してしましました。



鬼婆「その『おぇ〜』って描写、必要?」


あくまでも冷静な鬼婆は最後のスパートをかけ
珍念を追い込みます。


鬼婆「ま〜て〜」


珍念はやっとの思いでお寺にたどり着き、
門を叩きました。




ドンドンドン

珍念「和尚様っ和尚様〜!」


和尚「・・・」


珍念「和尚様?」


和尚「だ〜れ?」


珍念「僕です、珍念です!開けて下さい和尚様!」


和尚「新聞はいりません」


珍念「勧誘じゃねーって。珍念ですよ!」


和尚「武士道とは死ぬことと見つけたり」


珍念「そら信念だ。わかりにくいんだよ!」


和尚「だ〜れ?」


珍念「だから珍念だっつってんだろーが!」


和尚「合い言葉は?」


珍念「知らねーよ!」


和尚「山!」


珍念「は?」


和尚「やーま!」


珍念「川?」


和尚「海!」


珍念「空?」


和尚「滝川!」


珍念「クリステル?」


和尚「珍念か!」


珍念「だから最初から言ってんだろーが!」




一悶着ありながらも門を開ける和尚様。
事情を察し、納戸の中に珍念をかくし、
何食わぬ顔で囲炉裏端でモチを焼きます。
そこへ到着した鬼婆が和尚に問います。




鬼婆「小坊主来なかった?」


和尚「?」


鬼婆「バカ野郎〜そいつがルパンだ!」



しかし和尚はカリオストロの城を見てなかったので
さっぱり通じません。



和尚「どちら様ですか?」


鬼婆「鬼婆じゃ」


和尚「失礼ですが、それは名前ではなく職業ではないですか?」


鬼婆「職業、鬼婆?」


和尚「はい。で、どちら様ですか?」


鬼婆「いや、名前とかとくに無くて・・・」


和尚「そうなの?」


鬼婆「ずっと鬼婆で通してきたもので・・・」


和尚「それで済むと思ってるんですか、大人として!」


鬼婆「すみません」


和尚「謝って済む問題じゃないでしょう!」


鬼婆「はぁ」




すっかり恐縮して小さくなる鬼婆。
すると和尚様は小さくなった鬼婆を
モチにくるんで食べてしまいました。

こうして生まれた料理は後に「小籠包」と呼ばれ
広く世界中で愛されるようになりましたとさ。

モドル

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