10 月23日

開いてたっていいじゃない。

 先日、半蔵門線の車内で正面に座ったスーツの兄さん、チャックが全開でした。 「まあそんなこともあるよね」と流しかけましたが、その日は週末の夜。 彼がこれからコンパだったとしたら、僕は見殺しにするようなもの。 そんな非道なマネはできません。
 人道的措置として、いったい僕はどうするべきでしょうか?

1.はっきり指摘する
→「チャック開いてますよ」
しかし周りには人がいます。逆に恥をかかせてしまいます。

2.目配せする
→「ア・イ・テ・ル・ヨ」
ただでさえハードゲイ疑惑がある僕。「ア・イ・シ・テ・ル」と誤解されかねません。

3.こっちも全開
これだっ!人の振り見て直させる、まさに神のごとき愛。友よ、一緒に戦おう!

 などと考えている間に、兄さん全開のまま渋谷で降りていきました。 僕は三軒茶屋までの車中、涙が止まりませんでした。


10 月25日

ワイルド・アット・ハート

本日、車で山手通りを走って走っていました。

道路はいつも通りの渋滞。イライラをおさえながらも、ハンドルを握る手にもつい力がこもっていました。

しかし、いつも混む道とはいえ、今日のの渋滞はいつにもましてひどい。はて、どうしたものだろう?と考えながら要町を過ぎたあたりに差しかかると、あろうことか道幅が狭くなったところに停車された車があるではありませんか!
いったいどこのならず者のしわざだい!と、あたりを見回すと、車の脇に一組の老夫婦が。

しかし、そのお二人が目を引いたのは、なにも老夫婦だったからではありません。
おばあちゃん(推定75歳)がおじいちゃん(推定78歳)の襟首をがっちりとつかみあげているではありませんか。まるでビーバップハイスクールのような、いわゆるヤンキーづかみです。
お二人に一体何が起こったのでしょう?


「おい、ばあさんや。もうちょっとゆっくり走らんかね」
「やですよ、じいさん。まだ100kmですよ」
「しかし、ここは制限時速50kmだよ」
「大丈夫よ、あたしゃ60年も運転してるんだから」
「しかしのぉ」
「ッッッ!あのカマロ煽ってきやがった」
「こら、ばあさんやめなさい」
「しゃべってると舌噛むよ」
「だからやめなさいって」
「おい、ルパンどっちにつく? お〜んなぁ〜(モノマネで)」
「いや、ひとりで何いってんですか」
「きぃ〜!じいさんがガタガタ言うからカマロにまかれたじゃないのさ!」
「いや、うちの車デミオだし・・・」
「やかましっ!表に出な。根性たたき直してやるけん」


というような壮大なドラマが浮かぶ一コマでした。
お二人の末永い幸せを願わずにはいられません。


11 月9日

二人の距離

パーソナルスペースという言葉があります。“私有空間”と訳される、個人(の意識)が占有する私的空間を指す心理学用語です。ロバート・ソーマーの定義するところの「そこに侵入者が入ることが許されない、個人の身体を取り囲む、目に見えない境界線に囲まれた空間」つまり「知らない人がこれ以上近づくと不快」「気になるあの子と近くにいたい」などの目安となる、体の周りのテリトリーとでも言えばわかりやすいでしょうか。トイレや電車の座席などが端から埋まっていくのもこの意識によるところが大きいようです。

当初の研究によると、このパーソナルスペースは、文化・民族による違いが如実であるとのことでした。その後の研究により、教育水準や経済状況にも影響を受けることがわかり、民族によるの違いだけでは説明できなくはなりましたが、やはり気候、宗教、民族性による差違は存在するとの見方が主流のようです。それによると、礼を重んじる日本人のパーソナルスペースは最大級に遠く(広く?)、逆にラテンアメリカやアラブ諸国などの気さくでフレンドリーな人々のそれは日本人にとってはちょっとありえないくらい近いようです。





ところで先日僕は、某所にあるアラビア料理のお店に出かけました。刺激的で珍しい料理の数々に、僕はその都度感激し、絶賛の嵐。すると、帰り際に僕の賞賛が耳に届いたシェフが、僕を出口まで見送りに出てきてくるとのこと。


「ドモ、アリガト」

の声に振り返ると・・・

















ガゾウ

親密距離〔intimate distance〕
非常に親しい間柄で、たとえば恋人同士で、ささやくような会話を行なう距離。 (参考文献 「人間の空間」R・Sommer著)



「また・・・来てくれるかい?」(囁き声で)
「もちろんよ」(囁き声で)
「とっておきを作るよ。君が生涯忘れないような」(囁き声で)
「あぁ・・うれしいわ、ダーリン」(囁き声で)
「僕もさ、ハニー・・」(囁き声で)


















って、近いから。

バリバリの親密距離で話すシェフと僕。
「オイシカッタデスカ?」
「うん、とても」
「カライアジハ、ダイジョブデスカ」
「ええ大好きです」

話しながら、失礼にならない程度に少しずつ後退。徐々に追いつめられる僕。後ろには階段が・・
しまった、罠かっ!


「マタキテクダサイネ」(至近距離で)
「ええ、ぜひとも」(涙声)

そんなわけで、シェフの迫力に負けて再来店の約束までしてしまったのですが、まあ本当においしかったのでよしとしましょう。アラブ人のパーソナルスペースは近い、という学説は本当でしたが、シェフは気さくな良い方でした。

コックさん、素敵な夜をありがとう。


ガゾウ








11 月16日

G.G.S.N
〜グレート・ゴクドー・ソウル・ナイト〜


学校の卒業が決まり、就職も決まり、実際会社に入るまでの期間。人によりますが、その数ヶ月間こそ、人生における最高に自由な時間ではないでしょうか?僕も例外ではありませんでした。入った雑誌編集の会社はすぐにつぶれてしまったけど、例外ではありませんでした。



さて、みなさん、“自由”といったら何を思い浮かべますか?



そうです、その通りです。自由=ヘアースタイル、これ常識です。というわけで就職が決まった僕は、早速美容室へ向かいました。どんな髪型か、ですって?アフロに決まってるじゃないですか。何言ってるんですか。


当時、大所帯のソウルバンドでギターを弾いていた僕は、きっといつかアフロにして、アフロアメリカンの如きソウルフルなリズムを奏でてやる、と誓っておりました。アフロ関係ないじゃん、という気も若干しますが、要は気持ちです。ソウルだし。


さあ、そんなこんなでやってきました美容室。意気揚々と席に着き注文です。

「アフロにしちゃって下さい」

しかし、美容師の兄ちゃん、何やら気乗りしない様子。

「けっこう髪痛みますよ」

だの

「長さ足りないんで、あんまり大きいのできないスよ」

だの、
なんだかんだ理由を付けてアフロを阻止しようとします。おのれ、ストレート心棒者め。僕のアフロにかける思いは、そんな簡単には揺らがないぜ。小さいからなんだ。僕はいつも小さい、小さいと言われ続けt

とにかく、アフロはソウルだ。大きさじゃないぜ。とっととやっちゃっておくんなまし。
そんな僕の決意が伝わったのか、兄さんしぶしぶロッドを巻き始めました。


そして待つこと2時間・・・


さあ、アフロに生まれ変わった僕よ、新たな一歩を踏み出そうじゃないか!





あれ?
デジャブかな?
僕この人知ってます。












!!!!!




パンチ

あ痛たたたたっ!
母さん、これアフロじゃないよ。パンチだよ。
目の前に映るのはアフロアメリカンどころか昭和の銀幕スターも顔負けの見事なパンチパーマ。純和風です。
ってかこれは痛すぎる。
怖くて鏡の中の自分と目が合わせられません。




こうして1万8000円のお支払いで、あちらの世界への片道切符を購入した僕。涙目になりながら、逃げるように美容室を後にしました。


しかし、この数日後、僕は更なる恐怖に打ちのめされることとなります。この恐るべき出来事さえも、まだ恐怖のほんの始まりに過ぎなかったのです・・・




続く

11 月18日

G.G.S.N
〜Groove&Gospel Sonic Nation〜


さて、“プチ極道”として生まれ変わってから数日、開き直った僕はグラデーションのサングラスなどを購入し一躍時代の寵児となっていました。電車でも図書館でも教習所でも常に人々の視線を集め、コンパなどでは「見るだけで笑える」という、芸人のひとつの境地にまで登りつめていました。

しかし、それからほどなく、僕は世界の広さと、己の無力さ、小ささ(そこじゃないって!)を痛いほど思い知ることになるのでした。


先にもお話した大所帯のソウルバンド、名前を“グルーヴアンドゴスペル・ソニックネイション”と申しますが、そこには一人の凄腕ベースマンがいました。
彼の名前はクボタ。フィンガーからピック、スラップまでソツなくこなし、特に彼のチョッパーは打楽器とさえも言えるほど力強く、かつファンキー。彼の骨太のリズムが、10人を超えるビッグバンドの基盤をしっかりと支えていたのです。

が、天は二物を与えず。彼の芸術家風の風貌、特にザックリと切りっぱなした長髪は主に女性に大変評判が悪く、彼はいつも気に病んでいたものです。
そして、なんたる運命のいたずらか、彼もまた、僕と時を同じくしてヘアースタイル改革による人生のリロードを狙っていたのです。

しかし、「目立ちたい」という僕の欲求とは異なり、彼の目的はあくまで「女の子にもてる」というもの。彼はうろ覚えの単語を胸に秘め、理髪店に向かいました。

「ボブにしてください」

なんたる腑抜け、なんたる情けなさ。仮にもベースを手にソウルを奏でる男の口からボブなんて単語が出ようとは。
しかし、誰が彼を責められるでしょう!(責めたけど)
バンドで1,2を争う技術を持ちながら、一向にもてないベースマン。その彼が、床屋でボブとほざいた勇気に、僕は感動さえも覚えます。
よく言ったクボタ。君は戦って、そして勝った。さあ、人生の春を謳歌するがいい!






そして待つことおよそ5分・・・


鏡の中の自分を凝視するクボタ。



そして勇気を持って店員に問いました。













「あの…これ五分ですよね?」







ポク
ポク
ポク
ポク
チーーーーン
パンチ




こうして、ボブと五分(ごぶ)のニアミスで見事に出家を果たしたクボタ君。自分の髪を棚に上げて散々笑わしてもらいました。

そして迎えた次のステージ。
女の子のボーカルを挟んで左右に五分刈りとパンチパーマ。いまだかつてここまで統一感を欠いたバンドがいたでしょうか?はたしてこのバンドはどこに行きたいのでしょう?ボーカルの子も心なしか恥ずかしそうです。

こうしてイロモノ路線を余儀なくされた我がバンドG.G.S.Nは100%ビジュアル的な理由のみで活動範囲を狭め、活動縮小を余儀なくされていくのでした。






11 月19日

リアル

アフロでひとつ思い出しました。

あれは、僕が車の免許を取って間もない頃。 2日間で3回捕まるという離れ業をやってのけた僕は 当然免許停止の行政処分をくらいました。 しかし、なにやら講習を受ければ停止期間をグッと短縮できるとのこと。 この国はどこまで甘ちゃんなんだ。

チョロいもんだぜ、ケケケ。
とばかりにやって参りました教習所。 周囲を見渡すと・・・
いるわいるわ社会の不適合者ども。
ひとりでブツブツ愚痴をこぼすおっさん、
ジャージ上下でくちゃくちゃとガムを噛むヤンキー姉ちゃん、
その姉ちゃんと対になっているかのようなヤンキー兄ちゃん、
黙々と読書にいそしむ青年(読んでいるのはエロマンガ)、
ニュートラルでパンツ見えてるんじゃねぇかぐらいの女子高生、
そして・・・
でました、本日のメインディッシュ。

本物です、極道です、任侠です。
年の頃は30代の前半くらい、テカテカしたダブルのスーツを見事に着こなし 顔には薄い茶色のサングラス。当然頭はパンチパーマ。
100点です。
目の配り方、歩き方、そこはかとなく漂う空気まで まるでお手本のようなリアル893じゃありませんか(免停になったんだ。ぷっ)

さあ、そんな総勢7人で免停講習は始まりました。
最初は教官の話や交通マナーの復習などまあ、ありきたりの内容。 しかし2時間も経過した頃、講習は次のステップに進みました。

「グループディスカッション」

まあ、なんとこの7人にふさわしくない言葉でしょう!
何やら協調性だとかなんかを持つために、ひとつのテーマをみんなで話し合っていこうという趣旨らしいです。
本日のテーマは

「北極を旅行中に船が難破しました。次に挙げる道具のうち、持っていけるのは2つだけです。あなたは何を持っていきますか。そしてそれはなぜですか? ・水 ・食料 ・ゴムボート ・方位磁石 ・ソリ ・地図 ・毛布  ・猟銃 ・ライター ・ナイフ 」

車関係ねーじゃん。
北極行かねーし。
不適合者どもから至極当然の不満が溢れます。
しかし、無情にも教官はディスカッションの開始を宣言しました。

年長者の愚痴のおっさんが一応進行を務めます。

「じゃあ、一人ずつひとつの道具を挙げていきましょうか」

みんながそれぞれ道具と理由を答えます。僕はたしか毛布と答えました。全体的には食料の人気が高かったようです。
そして、いよいよ極道さんの番に。
期待に僕の胸は高鳴ります。心なしかみんなの目にも期待の色が。

ざわざわ
(アレだろ?)
(アレだよな?)

一瞬の静寂の後、極道さんは口を開きました。













「猟銃。」

っはい、合格ですっ!
みんなの頬がいっせいにほころびます(うそ)。
そうだよ、極道、あなたはそれでいいんだよ。自然体の君が一番美しいんだよ。
極道さんは理由を続けます。

「クマとか撃つんだよ」

イィィィヤッッホーーー!

クマとか。その“とか”の部分にはきっと僕らも含まれているんでしょうね。
うん。怖すぎ。

その後なごやかにディスカッションは進み、極道さんの

「ライターはもとから持ってる」

なんていう設定を無視した発言なども飛び出しながら幕を閉じました。

ちなみに極道さんはひどくいい人で、昼の休憩時には全員にご飯をごちそうしてくれました。ジャージの兄ちゃんは、終わる頃にはすっかり舎弟のようになってました。

僕が免停講習で学んだこと。
「極道はこわい」
それは、その後の人生に深い教訓となって脈々と息づいていきます。
交通マナーを守ろう。




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